この世界は今、五つの国からなっている。

知識ある北のアイスラ民族。

勇敢なる南のファイアル民族。

技術ある東のドーラ民族。

芸能ある西のフーガ民族。

それら四方に囲われる土地、中央国家ライスト。

三つの塔からなる白い岩造りの王城が麓、国家直属軍の鍛練場が設けられている。

「構え!!」

四方を高い鉄柵で囲われているそこで、凛々しい女声が響く。

「打ち込み、始め!!」

「「「はっ!!」」」

すると、それに従う数十人の兵士が、手にしているサーベルを振るった。

それぞれの前に立てられているカカシへ、一斉に袈裟斬りを仕掛ける。

うまくカカシをまっぷたつにする者、刃が跳ね返される者、様々である。

「腰が入ってないぞ!!」

と、女性が鞭撻した。

「そんな柔な剣筋で、ファイアルの戦士に敵うか! 訓練を侮るな!」

厳しく部下を見回す瞳は青く、深淵な泉のように澄んでいる。

背中へ流れる長い三つ編みは、月光を紡いだような白銀。

袖や襟を黒く縁取るデザインの、純白の軍服。

腰に巻かれた黒いベルトに下がった長剣、膝まである長靴。

立ち姿さえ勇姿と言われる彼女の名は、セリーヌ・ウォン・ドストロフといった。