私は左頬を押さえる。


なんで…

どうして…




『ふざけんじゃねぇ!

俺がどんだけお前を大事にしてきたと思ってるんだ!


今さら何が家庭だ?!

遅いんだよ!何もかも!


俺は絶対別れない!!』


【ガッシャーン】


奥寺さんは机の上に置かれたカップを床に落とした。



そして私の部屋を出て行く。



何…?

いったい…何が起きたの?


あまりの突然の出来事に私は理解できずにいた。



遅いって…どういうこと?

もう手遅れ…ってこと?


私は…奥寺さんの奥さんも息子さんまで傷つけてしまったの?



しばらく動くことができなかった。



コーヒーがカーペットに茶色の染みをつけていく。

そしてその染みは私の心をも支配した…