ナツとコヤジはバニラで飲み直すことにした。


「ナツ、マジでいいのか?ヤクザだぜ?」

「どうでもいいよ」

ナツは右耳のピアスを触りながら答えた。

酒を飲む時の最近の癖。

コヤジは隣で遠い目をしている友の眼底に憂色が沈んでいるのが分かった。

確実に壊れていくナツを見ていられない。



「サリー達が東京へ行ってもう半年かぁ。向こうで音楽頑張ってんだろ?やりたい事やんのが一番だよなぁ」

トムが独り言の様に喋る。
だがトムなりのアドバイスはナツの耳には届かない。


辛酸を舐め続けたナツ。

数少ない楽しかった思い出を必死でたぐり寄せていた。




翌日から2人はピカチュウに呼び出される日が始まった。


事務所の当番
切り取りの同行
事故などから粗を探しての恐喝
組事にも顔を出さされた。