6月30日、13時00分。

澤里翔吾は人と会う約束をしていた。

この馬鹿げた現実を終わらせるために。

失踪した雨宮鏡子が残した本当のメッセージを受け取るために。

待ち合わせの場所は、市街地にある小さい喫茶店。

翔吾がカウンターに座り、約束の時間を待っていると、やがて一人の女性が店にはいってきた。


「ブレンドのMを一つ。」

彼女は翔吾の隣の席に座り、コーヒーを注文する。

「初めまして、澤里翔吾さん。」

「初めまして。」

彼女が名刺を差し出す。



-KYOKO-



雨宮鏡子と同じ名前だった。

名刺の右下には、小さく『女優』と書いてある。