修学旅行から帰ってきて、数日が過ぎた。


花束を持って、病院の廊下を歩く九鬼。

廊下の一番奥にある病室のドアを、軽くノックすると、

九鬼は中に入った。


「生徒会長!」

ベッドの上から、嬉しそうな顔を向けたのは、早奈英だった。

その手には、黒い乙女ケースが…。


微笑む九鬼。

体の状態は、回復に戻っており、そのスピードは早かった。

医者も驚いていたが、乙女ガーディアンになっていたことが、影響を与えているようだった。

早奈英の顔を見て、安心した九鬼は花を花瓶に入れ変えた後…しばらく談笑し、

長居は無用と、病室から出ていこうとした。

「また来るわ」

微笑みながら、ドアノブに手をかけた九鬼に、

早奈英が声をかけた。

「あたし…絶対に元気になります!だから、あたしを…」

九鬼は、早奈英の言葉が言い終わる前に、返事を述べた。

「あなたはもう…月影の一員よ」

その言葉に、早奈英は嬉しそうに笑顔になり、

「はい!」

力強く返事をした。



九鬼が病室から出ると、どこからが歓声が響いてきた。

それは、病院から遠く離れた…広陵学園から。


勿論、九鬼には聞こえない。


ただ前を向き、歩く九鬼には、雑音など気にはしていられなかった。