あたしのパンチを受けたダイヤモンドは、絶句した。

胸元に拳の跡が残ると、そこからダイヤモンドの戦闘服に亀裂が走っていたのだ。


「あり得ん!」

戦闘服のダメージを見て、ダイヤモンドは初めて、狼狽えた。

今の一撃に、結構な力を込めたようで、あたしの体から、乙女ナイトのパワーがなくなりかけていた。

もともと自分で、ナイトになった訳でないから、力が安定していないのかもしれない。


「レッド!」

シルバーが走ってくると、あたしに向かって、両足をつけながら、ジャンプした。

「残りのナイトの力を、あたしに!」

シルバーの言葉に頷くと、

あたしの体に残る乙女ナイトの力を放出するかのように、シルバーの両足を蹴り上げた。


「月影!」

シルバーの足が、オーラで燃え上がる。



「だが…まだ!砕けてはいない!」

ダイヤモンドは天を見上げた。

「貴様の攻撃を避ければ…!?」

シルバーの光速の蹴りを見切ろうと、眼鏡をスコープに切り替えたダイヤモンドが、見たものだ。

月の下に浮かぶ…無数のシルバーの姿だった。

「残像!?」

唖然とするダイヤモンドに向けて、無数の流星が落ちてくる。

「流星キック!」

とシルバーが叫んだ時には、その身は地上に降り立っていた。


「ば、ば、馬鹿な…」

ダイヤモンドの戦闘服が砕け散り、

哲也に戻ると、

そのまま崩れ落ちた。


ダイヤモンドの戦闘不能を確認した乙女ソルジャー達は、歓喜した。


「やったあ!」

ピンクが両手を上げ、

「よ、よかったあ…」

ブルーもその場で座り込むと、ない胸を撫で下ろした。

「フッ」

ブラックは鼻を鳴らし、

「だり〜なあ!」

グリーンは大あくびをした。


「お兄ちゃん…」

あたしは嬉しかったけど、倒れた兄を見ると、心が傷んだ。


そんなあたしを、心配げに見たシルバーは、全身の力を抜いた。


「何を安心している?」

シルバーは突然聞こえた声にはっとして、後ろを見た。