劇場版 乙女戦隊 月影

「何!?」

あたしは、水の上を歩く行為よりも、足元から感じる波動に驚いていた。

「月の波動…ムーンエナジー!?」

少したじろいだあたしの裸眼で、表情を確認できるようになった時、


あたしは絶句した。



「お兄ちゃん…」

それは、紛れもなく…兄、結城哲也であった。


哲也はにやりと笑うと、

「結城里奈…いや、乙女レッドよ。大人しく、その乙女ケースを渡してもらおうか」
あたしの瞳を凝視した。


今だかつて、そんな冷たい哲也の目を、あたしは見たことがなかった。

肉親に向ける目じゃない。

「ど、どうして!わ、渡さなきゃならないのよ!」

強がってみたけど、足が震えていた。

今まで、敵と対峙した時にも感じなかった…恐怖。いや、異質の恐怖が、あたしを襲っていた。


なぜなら、その目には純粋な殺意しかないからだ。

怒りも憎しみもない。

肉食獣が、獲物を狩るのに、感情は必要ない。


「お兄ちゃん!」

そう呼ぶことで、あたしはその恐怖から逃れようとした。

「そうだったな…里奈。俺は、お前のお兄ちゃんだったな」

いつのまにか、哲也はあたしの後ろに移動していた。

「なっ!」

驚きと恐怖で、思わずあたしは、乙女ケースを握り締めた。

哲也は冷静に、乙女ケースを見つめると、無表情でこう言った。

「お前に、チャンスをやろう」

哲也は、あたしから離れると、指を鳴らした。

「敗北というチャンスを」


いつのまにか、哲也の後ろに、数十体の巨大なものが姿を現した。

「え!?」

あたしは、そのもの達を見ることで、少し我に返った。


「いけ!ご当地マスコットキャラクター軍団。」

哲也の号令に合わせて、体を動かす…マスコットキャラクター軍団。

あのネズミや…青いネズミ…ネズミ○輩!さらに、あの奈良三兄弟や、彦××や、バ○タン星人!白い悪魔や、宮崎のあれが、着ぐるみとなって勢揃いしていた。

「ご当地マスコットキャラクターじゃないのもいるって!と、言うより!」

あたしは後退り、

「著作権は大丈夫なの?」

映画の予算を心配した。