「まじうま!」

店員もいなくなった店内で、1人食べまくる蒔絵。


「チッ」

九鬼は、早奈英をおろす場所を探していたが、逃げ回る人々が多くって、安全な場所がない。

「あたしに構わず、戦って!」

早奈英の言葉も、九鬼は聞いていない。

魔神八つ橋と睨み合う。



「まったく…騒がしいことだぜ」

九鬼と魔神八つ橋の間に、金髪の女生徒が割り込んだ。

「十夜さん?」

間に入ってきたのは、十夜小百合。

十夜は、魔神八つ橋の体を下から上まで、目で確認すると、苦笑した。

「こっちの魔神は、捻りがないな」


「貴様!」

魔神八つ橋が、十夜に襲いかかる。

十夜は笑いながら、魔神八つ橋に背を向けた。

そして、九鬼を見つめ、

「お前を倒すのは、俺だ。こんな雑魚に、怯むな」


「俺を無視するな!」

ビンタを喰らわそうとした八つ橋の体が、突然細切れになった。


「十夜…」

九鬼は、十夜を睨んだ。


「フン」

鼻を鳴らすと、十夜は階段を上がっていった。

九鬼はちらりと、魔神八つ橋の残骸を見た。

弾力のあるもちもちしている魔神八つ橋の体が、綺麗に切断されている。


「腕を上げたな」

九鬼は、遠ざかっていく十夜の背中を見つめた。



「おのれ!八つ橋!」

階段から駆け上ってきたブルーが、無惨な姿になった魔神八つ橋に、驚いた。


「え?終わり?」

呆気に取られているブルーを置いて、九鬼は石畳を上がっていった。


「ち、ちょっと!」

後を追おうとするブルーに、戻ってきた参拝客が、携帯を向けて、撮影を始めた。

仕方なく、魔神八つ橋の残骸の横で、ブルーはポーズを決めた。