「事件の状況は以上、と言ったとこです」

「わかりました」

あたしはうなずいた。

達郎を見ると、アゴの先に手をあて、虚空に視線を飛ばしていた。

コイツは話を聞いていたのか?

「現場を見ることはできますか?」

不意に口を開いたので、あたしは少し驚いた。

「どうした、レミ」

あんたのせいだと言いかけたところで、浦川警部が間に入った。

「まだ現場検証は終わってませんが、まぁかまわんでしょう」

警部の案内で、あたしたちは現場となった部屋へ足を踏み入れた。

2間の、あがって右奥に台所がある。

トイレは共同で風呂はなし。

下瀬智広の遺体はすでに運び出されていた。

「部屋には物色された跡がありましたが、金品等で盗られたものはありません。先ほど下瀬政美に確認してもらいました」

まぁこのアパートに金目的で入らんでしょうがと警部は付け加えた。

「金品が盗られてないとなると、犯人の目的は何だったのかしら?」

「そりゃ何かを探してたんだろ」