「誰も住んでないのかしら」

そうつぶやくと、その言葉に反応したかのように、玄関のライトに明かりがともった。

同時に2階の左隅の部屋にも明かりが点く。

「なんなのよ?」

そう言ってマユをひそめると同時に、明かりの点いた部屋から男女の悲鳴が聞こえてきた。

驚いて顔を見合わせた次の瞬間、達郎がアパートに飛び込んだ。

あたしもあわてて後を追う。

ゲタ箱とスリッパを無視して土足であがりこみ、正面にあった階段をかけ上がる。

2階に登ると短い廊下の先に明かりのもれた部屋があった。

そしてその部屋の前で、ひとりの男性が座り込んでいた。

年齢は70才ぐらい。この部屋の住人だろうか。