その日も私たちはいつものように、飲み、語り、笑っていた。
気付けば、クラウンにはミヤが帰ったといえども、エミリー、力也、二人がとんと消えてしまった。
するとボーイの白井が電話だよ、と言ってキッドを呼んだ。
キッドは軽く舌打ちをしてタバコの火を消し、カウンターへと向かった。
しばらくして戻ってきたキッドは不機嫌そうで、革ジャンをつかみ、タバコとマッチをポケットにねじ込んだ。
「帰んのか?」
ミヤの問いかけにキッドは、ああ、と軽く答えて皆の伝票をつかむと、去ってしまった。
「気前いいなァ」
キッドの背中を眺めながらミヤがそう言った。
「機嫌悪かったな」
貴志がそう言うと、ミノルがトーンを落として言った。
「あの電話、お袋さんだよ。
キッドが機嫌悪くなんのはいつもそれが原因だ」
ミノルの言葉を聞きながら、私はキッドのシャープな後ろ姿をずっと目で追っていた。
いつも仲間を気にかけるしなやかなボスに、私たちは暗い影を見た。

