玄関に行き、靴を履くと、ミヤは行ってらっしゃいと言った。
「えっ、行かないの?」
驚く私に、ミヤは平然と頷いた。
「嫌だよ、一緒に行こうよ!」
私は駄々をこねてミヤの腕をひっぱった。
「オイ、どうしたんだよ。ハルらしくねェなあ」
そう言ってミヤは困ったように笑った。
「なんかいいな」
「えっ?」
「普段は顔ひとつ歪まない、淡々としたお前がさ、こう感情的になるのって、いいよな」
あまりにもしみじみとミヤが言うものだから、私は「そうかな」とだけ呟いた。
とても活発で、あちこち歩き回るミヤなのだけれど、ここ最近は、こうして何もせずに部屋に引きこもるのが、好きになっていたようだった。
ぴゅう、と吹いた木枯らしのせいだろうか、それとも淋しすぎるミヤの瞳のせいか、無意識のうちに私の胸は、言葉には表せない焦燥感に圧迫されていた。
淋しげなミヤの瞳を振り切って、私はずっと足元を眺めている。
寂しいね、ぽつりと呟いた私を、ミヤは勢いよく引き寄せて抱き締めた。
「……ミヤ?」
私が彼を呼んでも、ミヤは何も言わずにただ私を抱き締めている。
突然すぎるミヤの感情的な抱擁に、私はただ目をぱちくりとさせた。
その代わりに、彼の腕は熱を帯びたようにかったるく、ぎゅう、と力強く締め付けられた。
「ミヤ、苦しいよ……」
私は少しだけ顔を歪ませた。
「大丈夫だ、お前が呼んでくれりゃいつだって飛んできてやるよ」
私の首筋に顔を埋めて、耳元で囁く声。その声は、いつものミヤの声より、ぞくっとするほど掠れて低く、どことなく苦しげだった。

