「自分の溢れる欲に勝手に溺れて、好きなオンナを夢中で抱く。
オンナを苦しめてるとも知らずにさ」
ミヤはそう言いながら目を細めて、遠くを見つめた。
「ミヤも、そうなの?」
私がそう尋ねると、車が信号で停止した。
「あるよ、男だもん」
「……今も?」
信号は青になり、車は動き出した。
ミヤは何も言わなかった。
前を見つめたままの瞳は、いやなくらいに真剣で、何かをじっと睨んでいた。
いつもとは違うその瞳は、私の知らない彼の過去だとか想いとかが映し出されていて、私が彼を見つめても色のないその瞳は、私を拒んだ。
嫌だ、胸が重く重く渦を巻き、消えてしまいたい位だ。
私には触れてはいけない彼の一部分が、とてももどかしい。
ねえミヤ、そんな目しないで。
しばらく私たちは無言だった。
車が、ゆるやかな坂道を下った。
ちらりと目に入った輝きに、あっと声をあげた。
「海だ。
ねえミヤ、海だよ」

