最後の電車がホームに滑り込んだ。 私たちは手をつないで雪の中入ってくる電車を見守った。 「それじゃあ、もう行くね。」 柊くんの左手が私の右手から離れた。 荷物とギターを担ぎ直して柊くんが歩き出した。 私は柊くんの後ろ姿を初めて見た気がした。 夢に向かって歩いていく大きな背中。 その背中には宝物。 やっぱり柊くんは格好良かった。 「待って!」 まだ間に合うのなら、ありったけの力で引き留めたかった。