灰色の綿から降り注いだ滴は、地面に染み込み広がっていく。


そんな一連の風景には、名前があった。
“雨”という名前が。

そんな一連の風景を、今まで何気なく目にしてきた。


──最近は。

“雨”が降る度に、君を思い出す。





「兄貴だよ」


大輔からそれを聞いたのは、部活終了後の更衣中の時だった。

突然切り出された主語のない言葉に、俺は軽く眉をしかめ「何が?」と問い掛ける。


カッターシャツのボタンを閉めながら、大輔は目線だけを俺に向けた。

真剣な瞳からは感情が読み取れない。


「中村と一緒に帰ってた男」


思考が止まった。


「あれ多分、中村の兄貴だ」

「……え?」

「一個上にいるらしいんだよ。中村と同じ中学の奴に聞いた