幾年月君を想い過ごしただろう

 年月は君を風化させる事は出来ずに流れる

 君を風化させる事など何者には出来はしないだろう

 白い布を顔にかけた君を見たあの日から

 君の遺影を見たあの日から

 君の柩を見たあの日から

 君の細く白い骨を見たあの日から

 僕は全てをやめた

 希望も

 絶望も

 思考も

 無心も

 全てやめた

 今でも夢に見る君は

 あの頃と何一つ変わらぬ笑顔で僕を見る

 僕は笑顔でそれに応える

 あの頃の笑顔とは違う笑顔で応える

 そして僕は笑顔で言うんだ

 全てやめた僕だけど

 やめるのはやめにしたんだ

 君を愛してたから

 君を愛していたから

 彼女を愛しているから

 彼女を誰より愛しているから

 全てを始めるんだ

 今から全てが始まるんだ

 最高で

 最愛の

 彼女との日々が

 君を亡くしたあの日に止まった僕の時間を

 彼女は再び動かしたんだ

 その細い腕で

 ゼンマイを回したんだ

 僕の時計のゼンマイを


 君を誰より愛してた

 そして

 彼女を誰より愛してる