その日の夜。 (この家から出ていく… 麻津裏兄ちゃんから、離れる) 「麻津名…ご飯出来たよ」 「今、行くから」 (最後の晩餐…) そんな言葉が自然と浮かぶ。 明日には、この家を離れなければならない。 なのに、麻津名は酷く冷静だった。 カチャカチャ… 食器のぶつかる音だけが聞こえる。 いつもなら、聞こえる話し声も笑い声も今日は一切なかった。 一言も話さず食べ終わり、終身時間になった。 麻津名は部屋にいた。 と、そこに。 コンコンコン。 扉を叩く音が響いた。