3月20日。


『ケイゴ。あなたにお客さんが来てるわ』


キサラギミサトはお店のバックルームでデザインを描いているケイゴを呼んだ。


『僕にお客!?一体誰だろう?』


ケイゴは椅子から立ち上がり、お店の方へ出て行った。


すると、店の入口の所に黒いハットを被った少しワルそうな男が立っていた。


『初めまして。フレンズのギター担当のシュンです。…君がケイゴ?』


シュンはケイゴをじっと見た。


『あ、初めまして。シュンさんの事はレイナから聞いてます』


ケイゴは笑顔で言った。


『今時間あるかな?』


シュンは時計を見ながら尋ねた。


『えっ、時間ですか…今はちょっと…』


ケイゴがそう言いかけると、背後から声がした。


『いいわよー。30分だけ休憩あげるから、いってらっしゃい』


話が聞こえていたキサラギミサトがケイゴに言った。


『はい。ありがとうございます』


ケイゴはそう言って、シュンと一緒に近くの喫茶店へと入って行った。


二人は席に座り、コーヒーを注文した。


シュンはずっと黙り込んでいたが、注文したコーヒーが来るなり一口飲んで、口を開いた。


『レイナから聞いたよ。二人は付き合い始めたんだってな』


『あっ、はい』


ケイゴは緊張気味に返事をした。