『ゆ、夢…か…』


ケイゴにとって、いつしか自分の中から失くしていた『夢』という言葉。


それを一生懸命に追いかけているレイナの姿が、今のケイゴにはとても眩しく輝いて見えた。


そしてケイゴはふと考えた。


今の自分にとって『夢』って一体なんなんだろうって。


『ケイゴ!?どうかした?』

ふと考え込んでいるケイゴにレイナは尋ねた。


『えっ?あっ…ううん、何でもないよ』


ケイゴはそう言ってごまかすように笑った。


『あっ!!雪だよ』


レイナは立ち上がり両手の掌を広げた。


『ホントだ。どおりで寒い訳だよね』


雪を見たケイゴは笑顔を零した。


『ケイゴと初めて会った日も雪が降ってたね。あっ!!そろそろ休憩時間が終わる頃だ。私バイトに戻らなきゃ。…じゃあね、ケイゴ』


そう言ってレイナは、ギターを抱え足速に去って行った。


レイナの立ち去った後、ケイゴはしばらく一人で夜空から舞い散る雪を眺めていた。


『夢か…。いつからだろ…いつから見なくなったんだろう…』


ケイゴはそっと独り雪に向かって呟いた。