1月20日。


日がすっかり沈み、月が顔を出し、道行く人の暗い足元を優しく照らしている。


そんな月の何気ない優しさに気付いている人は、この世界にどのくらいいるのだろうか。


この世界にそんな優しさがあちこちで溢れている。


『お疲れ様です』


バイトが終わったケイゴは挨拶をしてショップを出た。


駐車場まで来ると、キサラギミサトが赤いスポーツカーに乗ってケイゴを待っていた。


『さあ、食事に行くわよ。乗って』


キサラギミサトは車の窓を開けてケイゴに言った。


『えっ…!?あ、でも…』


ケイゴは突然の誘いに戸惑った。


『早く乗って。早く早く』


キサラギミサトは戸惑うケイゴを急かした。


『わ、わかりました』


ケイゴは渋々キサラギミサトの車の助手席に乗り込んだ。


キサラギミサトはアクセルをふかし、路上へと車を走らせた。


『何が食べたい?』


キサラギミサトはケイゴの方をチラっと見た。


『えっ!?えーっと、うーん…』


ケイゴは考え込んだ。


『食べたい物ないのー?何かあるでしょ…フォアグラだとか、キャビアだとか。フランス料理のフルコース何かはどう?』


キサラギミサトはケイゴにいくつか提案した。


『あの…ミサトさんって、いつもそんな高級なものばかり食べてるんですね』


ケイゴは笑顔で言った。


『えっ!?…ケイゴはいつもどんなもの食べてるの?』


『んー、いつもは自炊ですし…ヒロとたまに食べに行く時は居酒屋なんかが多いですね』


ケイゴは考えながら言った。


『居酒屋?…居酒屋って、どんなトコ?』


キサラギミサトは不思議な表情で見せて尋ねた。


『えー!!ミサトさんは居酒屋に行った事ないんですか?』


ケイゴは驚いた。


『ないわ…。悪いかしら?』


『イヤ、別に悪くはないんですけど…』


ケイゴは戸惑いを浮かべた。


『よし、決めたわ。その居酒屋に行きましょう。ケイゴのよく行く居酒屋まで案内しなさい』


キサラギミサトは強気で言った。