しかし、レイナはその場を動かなかった。


『レイナ。ぼ、僕は大丈夫だから…ちょっと病院に行って…僕もすぐに見に行くから…約束するよ。だから、レイナ…行くんだ。行ってレイナの歌で…たくさんの笑顔を…咲かさなきゃ』


ケイゴは苦しいはずなのに笑顔でレイナに言った。


『ケイゴ…』


レイナは涙を拭って立ち上がった。


そしてレイナは、道路の脇で泣く子供の頭優しく撫でて、ケイゴの方を振り返らずに走り去った。


『…何だか…今日の雨は…いつもより冷たいなー。ハァ…ハァ…、レイナ…僕はいつだって…君の傍にいるからね。君に出会えたお陰で…僕はもう一度夢を見る事が…出来たよ。ホントにありがとう』


ケイゴは薄れ行く意識の中、空高く手を伸ばした。


そして、倒れているケイゴの元に救急車のサイレンの音が近づいて来た。


『…今度は大切な人を守ることが…出来た。…レイナ、誰よりも幸せに…なっ…て…』


ケイゴは降りしきる雨に包まれながら、力尽きた。


そして救急車がようやくたどり着き、ケイゴは病院へと運ばれて行った。