『ストップだ』


小林誠吾はまた曲を止めた。


『レイナ。おもいっきり歌うのが恐いのは分かるが、今のままでは前みたいに観客を魅了することは出来ないぞ』


小林誠吾は冷たく言い放った。


『レイナ。何をためらってるのよ?喉は大丈夫だから…そんな歌い方レイナらしくないわよ』


里菜もレイナに忠告した。


『…うん。分かってるんだけど…でも』


レイナは不安げに言った。


『抑えて歌う必要はない』


キースもきっぱりと言った。


そんな様子を黙って見ていたシュンが口を開いた。


『レイナ。ケイゴの気持ち考えてやれよ。あいつはお前が歌えるようになるまで、フランスには戻らないはずだ。レイナが歌わなければ、ケイゴの夢もこのまま止まったままになるんだぞ。だから勇気出しておもいっきり歌って見ろ。俺に聴かせてくれ、あの歌声をもう一度…』


シュンはレイナの目を見て、レイナの心に語りかけるかのように言った。


シュンのその言葉を聞き、レイナは勇気を出して歌えなかった自分が情けなくなった。