『歌声が…変わる…!?』


レイナは信じられない様子で言った。


『そうなんだ。君たちのバンドの事は私も良く知ってる。君は天使の歌声と言われているんだろ?その声が変わるかも知れないのは、確かに酷だが…全ての判断は君に任せるよ』


医者は重苦しい雰囲気で言った。


レイナは手術の恐怖と、声が変わるかも知れないという不安の中で、放心状態のまま病院を出た。


そしてレイナはその現実を受け止められず、冷たい雨にうたれながら何処へ行く訳もなく、降りしきる雨の中をびしょ濡れになりながらさまよい歩いた。


時には人にぶつかり、時には車に水をかけられ、時にはびしょ濡れになったその姿を白い目で見られた。


もうレイナはボロボロの状態だった。


11月の冷たい雨が、そんなレイナに容赦なく降り注ぐ。


レイナは無意識の内に、いつもの歩道橋へとたどり着いていた。


そしてレイナはつまづき転び、押し寄せる不安と恐怖を胸にそのままその場で泣き崩れた。


『…どうしたらいいの?どうしたら…。もう私…ダメだよ…。ケイゴ…ケイゴ助けて…ケイゴ…』


レイナは雨混じりの涙を流し、雨にうたれ冷え切った体を起こし、立ち上がる力もなかった。