『サキちゃん…』


レイナは病棟を出て、病院内の庭のベンチに座ってしばらく考え込んでいた。


『弱音吐いちゃダメか…。サキちゃんは病気と必死に戦ってるんだもんな…たまには弱音を吐きたくなる事もあるよね?…もっとサキちゃんを応援してあげなくちゃダメなのに』


レイナはベンチから立ち上がり病室に戻った。


しかしサキの姿は病室にはなかった。


サキは病状が急変し、もう二度と病室に戻ってくることはなかった。


そしてレイナはサキの事を思い、その日の夜独り泣きじゃくった。


数日が過ぎる頃、レイナの家に一通の封筒が届いた。



レイナさんへ。

サキと友達になってくれて、ありがとうございました。
亡くなる前に言ってました。
サキはいつまでもレイナさんと友達でいたいって…。
だから、サキが亡くなった今でもずっと友達で居てやって下さい。
レイナさんといる時のあの子は、凄く楽しそうでした。
あんなに笑ってるあの子は、私どもにとっても久しぶりに見ました。
レイナさん、サキに笑顔をくれてありがとうございました。

サキの母親より



そして封筒の中にはまだ完成されていない、向日葵の絵が同封されていた。


その絵は一輪の向日葵が、遥か彼方の空を見つめている。


きっとその向日葵の見つめるその先で、サキは病気の事を忘れ元気に笑っているに違いないだろう。


少なくともレイナは、そうである事を願っていた。