奴はナイフを、勢いよく振り落とす。
あぁ、俺は殺される。
最も憎き奴に、刺し殺される。
もはやナオも少し気が狂っていた。
ナイフを見てもそれを恐れず、
ただこれから自分は殺されるのだと 考えていた。
「・・・ッ!?」
蹲っていた母親が、ナオを抱き締める。
振り落とされるナイフ、
すべてが、スローモーションだった。
少し揺れた母さんの体も、
飛び散っていく赤い血も。
ただ目を見開け、固まるナオ。
聞こえてくるのは 男の叫び狂った笑い声とグチュ、というえぐい音。
「ナオ・・、ごめ・・んね」
次第に消えて行く力ない声。
それが、彼女の最後の言葉。
かあ・・・さん?
ぐったりとした母親の体。
手にはベトベトした何かが、付いている。
「次はお前だぁ!餓鬼ぃ!!」
母親の体に埋れていた放心状態のナオの胸倉を掴み上げる。
奴は何かを叫び続ける。
ナオはゆっくりと視線を、自分の手にする。
手のひらいっぱいにベトつく真っ赤な血。


