みな眠りに入り静まり返っている真夜中のある日、紺碧の空に浮かぶ大きな満月だけが悲しき出来事を見下ろしていた。
「ナオ、行きましょう」
母親はナオの小さな手をギュッと握り締め、片手には荷物を持っていた。
今日はあの狂った義父親がいない。
こんなチャンス、滅多にない。
毎日のように酒を飲み、毎日のように麻薬を打つ。
そんな奴は心身ともに狂っている。
『うん・・』
ようやく、あの男から母さんを解放出来る。
月明かりだけが照らす薄暗い廊下を、音を立てずに歩いていく二人。
「今日はキレイな満月ね」
大きな窓の外を眺める母親を見てから、ナオも月を見上げる。
満月の夜には不幸が起きる―――。
誰かが、そう言っていた気がする。


