涼しい夏の夜。 草むらの中から、虫たちの声がする。 ぽつんと立つ外灯の下で、私は彼女を待った。 「あ、咲!」 私は、向こうからやって来る彼女の姿を見つけると、大きく手を振った。 だけれど、彼女は何も言わずに、こちらへ近づいてくる。 暗くて、表情がよく見えない。 「咲…?」 夏の夜は、さっきまで確かに優しかった。