「トク、悪かったな。気にしないで良いからな!」


碧人から謝られると、

「なんだよ、別に謝られることじゃないよ。ビックリはぁしたけど…」

自分が悪い気もしてくる。


それからも、少し練習は続けたが、
なんだか、皆、落ち着かない様子。


茜の気持ちが揺れ動いた、
その“真相”や
それについての“結論”が、
気になっているといったところだろう。



「そろそろ私、帰ろっかな!」


律子が言った。


「え。」

「あ〜いいの!光ちゃんはやってて!」

と、そこへ、

「じゃあ、あたしも帰る!なーんか、グダグダだし。いい?」

波多野も言いだした。


「そーだな。今日はやめっかぁ?」


皆が納得する中、

「…ごめんなぁ。」

今のこの空気に責任を感じ、謝る徳幸。


「なんでトク謝ってんのぉ!?」


よく分からないが、
練習に遅れた理由と茜の言動…

そして、
茜がどういうつもりで言ったかは知らないが、
仮に本当だとしたなら、
“好き”とかって、それ以前に、
ついさっき、茜の唇に
“心”ではなく“下心”を揺らしていた自分を、
申し訳なく思うのだった。