「ひどーい」 「ほら、連れ待ってんだよ。早く帰れ」 パタパタと足音が近づいてきて、あた しは慌てて立ち上がった。 激しい音を立てて開かれた扉、そこか ら出てきた女の人は先輩で、俯きがち にあたしに気づかず廊下を走ってく。 一瞬だったから分からなかったけど、 きっと泣いてた。 「お帰り」 窓の下の壁にもたれながら足を伸ばし てこっちに笑いかけてくる薫くん。 薫くんってこーいう人だったんだ。 ……あたしもいつか、さっきみたいな 酷い言い方されるんだ。 .