「煌めく宝石なんていらない。多くの者たちを動かす権力なんてものもいらない。私が望むものはただ一つ。〝自由〟よ」
小さな家だけれども、お父さんとお母さんとの思い出が詰まったあの家で、リーラと一緒にほのぼのと過ごす。
それさえ出来れば、私は幸せになる。
「それに、グレイはそんな権力とか財宝を求める奴の方がいいの?」
「……あまり好きではありませんね」
「じゃあどうして、そういうこというのよ」
「エル様に支障をきたす者よりかは、そういう者の方が融通がきくのです。エル様の言葉に従う者の方が良いでしょう?」
まあ、エル様に抗おうなどという思いを実行できる者はいないでしょうが。
「――そんなの、〝妃〟であってもただの飾り物だわ。何も楽しくないし、面白くもない」
「そうでしょうね」
「………」
「まあとにかく、エル様の気分を害さないでほしいだけです」
「きっと無理よ。先に謝っておくわ。ごめんなさい」
どうして私が謝らなくちゃいけないのかも疑問なところだけれど。
はあ、とため息をつく。少女が彼のため息を聞いたのはこれで何回目になるだろうか。まだ出会ったばかりだというのに。
「エル様はまだ帰ってはおられません。ですからもうしばらくの間ゆっくりとしていてください」
「行けと言われても行かないかもよ?」
「その時は魔法によって体を勝手に動かされ、無理やりにでもエル様のお部屋まで行くことになるでしょう」
にこりと彼は笑う。けれど目は笑っていない。
「扉が自ずと開くでしょう。そしたら、エル様のお部屋まで行ってください。灯りが誘導してくれますから」
そう言って、彼は扉を閉めた。


