「もも様、一つ忠告を」
食器を片づけ、トレイに乗せながら、グレイは口を開いた。
「忠告?」
「ええ。エル様の気分を、決して害さないでください」
その言葉に、少女は眉を寄せる。
「どうして?」
「あなた様もご存じだと思いますが、エル様はとても冷酷な方です。もも様は特別な方なので、命まで失うことはないかと思われますが……」
「ふーん、あっそ」
「あっそ、って……もも様」
不機嫌そうな顔をしながら、彼女は口を開ける。
「魔王だからって、どうして相手の機嫌を伺いながら接しないといけないの? 私は別に、魔王の従者でもなければ、彼を慕う者でもない」
「ですが、相手はこの世界を治める方ですよ」
「だからって自分勝手にしていい訳じゃないでしょう」
勝手に私を拉致して、勝手に私を閉じ込めて、挙句の果てにはアイツの〝所有物〟だなんて、絶対許さないんだから!
「確かに魔王は恐いわ。でも、私は決めたの。魔王の言いなりなんかにはならないって」
「……はあ」
思わずため息が出る。
本当に、意地っ張りというか、頑固というか……困った方だ。
「魔王様に気に入られるなんて、とてもすごいことなのですよ。上級魔族の女たちの間では〝妃〟の場を自分が手に入れようと、争いあうことだって多いというのに」
「私は別に〝妃〟なんて望んでもいない」
「ですがあのエル様に目をつけられたのですよ。むしろ開き直り、望むものを手に入れていけばいいではないですか。何でも手に入りますよ」
「……グレイはわかってない」
ももの声が、少し低くなった。


