主人とネコ(仮)




「――――ま」

もう一人の私の姿が、ぼやけてうまく見えない。

「―――さま」

ねえ、待って。さっきの言葉は、一体どういう意味?
〝私が、貰ってあげる〟なんて、そんな言葉――。

「もも様」

体がびくりと僅かに震える。目に映るものは、グレイの怪訝そうな顔。

「大丈夫ですか?」

「あっ、う、うん。大丈夫。ちょっとぼーっとしてただけだから」

――……私、いま一瞬夢を見ていた?

「本当に、どこか具合でも悪いのでは……」

「ううん、違うよ。ほら、この後魔王のところに行かないといけないから、どうやったらアイ……魔王に血を飲まれずに済むか考えてただけ!」

ふん、とそっぽ向く。

「魔王に会うと思うだけで、食欲も減っちゃうのよね。……アイツとなんか二度と顔合わせたくないわ」

……最後の言葉は、おそらく胸の内で言っているつもりなのでしょう。

はあ、と彼は嘆息する。

「私も、もも様が何かしでかすのではないかと心配で心配で、食欲が失せてしまいます」

「なっ……何かしでかすって、何よ!」

その言葉にまた小さくため息をつき、グレイは肩をすくめた。

「何でため息つくのよ」

「いいえ、別に」

思っていることが口から零れるなんていう癖、本当に厄介なものです。
それがエル様の前で出なければいいのですが……。