主人とネコ(仮)





グレイが部屋を後にし、しばらくベッドの上で寝転がっていたが、することもなく、起き上がる。
部屋にあるものは少なく、ベッドとナイトテーブル、そして本棚。ただそれだけだった。

唯一暇つぶしになるものは本棚に並べられている様々な本。
その内の一冊を手に取り、中を開いてみるが、すぐにももは肩を落とす。

「難しくてよくわからないよ……」

はあ、と嘆息し、ふわふわのベッドに腰掛け、そのまま後ろに倒れる。
窓から見える青空を、呆然と眺めた。

「どうして、こんなことになっちゃったんだろう」

……まあ、私が外に出たのが悪いんだけどね。
血さえ流さなければ、拉致されることもなかったのに。

( あなたの血は、特別だから )

「……私の血って、そんなに特別なものなの?」

血なんて、みんな一緒なんじゃ……。

――特別ですよ――

透き通るかのような綺麗な声が、どこからともなく聞こえた。
あまりの突然さに、ももは肩をびくつかせる。

「……誰?」

体を起こし、恐る恐る訪ねた。

――私は、ここです――

その言葉に、辺りを見渡す。すると本棚に並べられている本の中、一冊だけ、仄かに光を放っているものがあった。