「わたし、辻原藍子(つじはらあいこ)!よろしくねっ」

教室の隅で、みんなのやり取りを眺めているだけだったあたしに、そう声をかけてくれたのはアイコだった。

クリクリっとした真ん丸な目が印象的で、人懐っこい。

あたしはちょっと恥ずかしくなって、うつむきながら話した。

「あ…あたし、戸塚彩音(とつかあやね)」
「彩音かぁ。かわいい名前だねー、すごい似合ってる」
「え!?いや、ごめんっ、あの…そんなことないし!」
「あはは、彩音なんでそんな必死なの?」

誰かに褒められたことなんてなかったあたしは、すっかり顔が真っ赤になってしまって、ちぎれるんじゃないかってくらいに思い切り首を横に振った。

アイコはそんなあたしに手を叩いて爆笑。

余計に恥ずかしくなった。

しばらくすると、男の子二人組が教室に入ってきた。

アイコを始めとする女の子全員の視線が、一気にそちらに集中する。

うわ、どっちもすごいかっこいい…。

「あッ!あれ、夏木敬人(なつきけいと)と白石瑞樹(しらいしみずき)だよ。彩音、知ってる?」

興奮した様子でアイコが聞いてくる。