驚きと息苦しさで、もがくように暴れると、唇が離れた。

だけど腕はつかまれたまま、さらに体を引き寄せられた。


地面に触れているつま先から、力が抜けていく。



「黒崎……俺は、さやかとのことをお前に隠そうとした時点で、すでにお前を特別な目で見てたんだ。

今さらこんなこと言うのは最低だとわかってる。
けど、あれからの2年間、すごく苦しかった。
お前と再会してからは、もっともっと苦しくなった」


「私だって同じです」

彼の言葉をさえぎるように叫んだ。


「先輩が卒業してからも、私はあなたへの想いにずっと苦しんできたの。
それを、過ちだなんて――」


「過ちだよ、今もそう思ってる」


訴えかけるようなレンの瞳に、思わず息をのんだ。

目の前にある彼の頬は、私の涙でうっすらと濡れている。



耳元で、あの日と同じかすれた声が響いた。



「だけど俺たちは再会してしまったから……
止められない過ちなら、お前と一緒に犯したい」