昔あるところに牛郎という名の誠実で心優しい青年がいました。

両親を早くに亡くした牛朗は、兄夫婦と暮らしていましたが、兄嫁は牛朗に毎日辛くあたっていたのです。

ある日、いじわるな兄嫁は牛郎に九頭の牛を与え、この九頭の牛を一週間以内に十匹にしてこいと無理難題を告げて、もしできなければ家を出て行けと冷たく言い放ちました。

牛朗は九頭の牛を引き連れて、当ても無く十頭目の牛を探しまわっていました。

そして5日目の朝に山を降りてきた村人から山の奥に病気に掛かって倒れこんでいる
一匹の白い老牛がいると聞きました。

さっそく牛朗は、その牛を探しに山の奥へと入っていき、その白い老牛を見つけ手厚く介抱してあげました。

白い老牛は牛朗の献身的な介抱のおかげで元気を取り戻しました。

牛朗はその白い老牛に向かって言いました。

「お前、私と一緒に来てくれるかい?お前を連れてかないと、僕は姉さんに家から追い出されてしまうんだよ」

白い老牛は牛朗に向かって一言、モオォォォと鳴くと九頭の牛を引き連れるように牛朗と一緒に歩き出しました。

牛朗は喜び十頭の牛を連れて兄夫婦のところへ戻っていきました。

兄嫁は、言いつけどおりに十頭の牛を引き連れて帰ってきたのを見て苦々しく思い
牛朗が連れ帰った白い老牛を見て難癖をつけましたが、牛朗の気の小さいおとなしい
兄が、約束を守った牛朗をかばい嫁に牛朗を家に居られるように助言してくれたので、牛朗は家にいることができました。

兄嫁は牛朗を家から追い出すことができずたいそう悔しがりました。