愛はすでに家におった。

 オレがおばちゃんに軽くあいさつしながら愛を待つと、何てことない顔をしてオレを迎えでる。


「悪いな、突然」


「ううん、どうぞ」


 オレはそう言う愛に続いて階段を上がる。

 愛の部屋は二階やった。

 部屋に入って、いつものようにオレは床に置かれたクッションに腰を下ろす。

 きょとんとした様子の愛も、オレに向き合う。


「変な感じ」


 愛が言う。


「ピリピリしてる。

 何かあった。

 それとも」


「それとも?」


「これから何かおきる、とか」


 勘が鋭い女はときに扱いやすい。

 覚悟してくれるんやったらありがたい。


「試合前とはまた違う感じ。

 どうしたの。

 好きな女でもできた?」


 これまた直球で。



 正直。

 そのあまりの直球加減にオレは。

 言葉を返せなかった。