せっかくこの町で過ごす最後の日だというのに、町はどうやら歓迎してくれないらしい。
「幸希、荷造り終わったのか?」
「ああ」
「出発は明日だろ?」
「…ああ」
僕の答えを聞くなり、麻人は僕の溜め息とは比べものにならないくらいに深く息をこぼしてみせた。
麻人と肩を並べ、くだらない話で盛り上がりながら登下校するのも、今日が最後。
そんなことを考えていると、鼻の奥につんとした感覚が走ったのがわかった。
同時に、瞼の裏に、笑いあった日々の映像が、それはもう言葉にならないくらいに鮮明に映し出されてくる。
入学式、『顔がいいから』なんて理不尽な理由で先輩に絡まれていた麻人を助けた僕は、それから彼につきまとわれるハメになった。

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