それでも僕は『彼女』が大好きだった。
『彼女』を愛していた。
一生で好きになるのは、『彼女』だけだと、信じて疑わなかった。
今、僕の隣に、『彼女』はいない。
「お願い。あたし、それだけで強くなれる」
彼女の声は、もう僕の耳には届いていなかった。
思い出された記憶が僕を包み込んでいた。
鼻をすする彼女に、僕は、瞳を向けることさえ
…出来なかった。
一緒に水に濡れた紫陽花(アジサイ)に触れることも、
共に虹が輝く空を見上げることも、
水たまりだらけの道路を並んで歩くことも、
雨を見てはしゃぐ君を見ることも
きっともう2度とない。
それでも僕は好きだった。愛していた。
一生に一度の、忘れられない恋だった。

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