涙の欠片


タバコを咥えたまま唖然として見ていると、一台の白いセダンの車がこっちに向かってライトを照らし中に入ってきた。

車高の低いフルスモークの車。見ただけでも分かるイカツイ車。

セルシオだっけ?大体の事は父が乗っていたからあたしにも何となく分かる。


その後に続いて入ってきた車は普通のセダン。

止まってすぐに言葉を無くすくらい呆然として、あたしの身体が硬直した。


お互いの助手席から降りてきたイカツイ男達が、いきなり声を上げながら殴り会う。

何がどうなってんのか分からないこの状況からハッと我に返り、あたしは手に持っていたタバコを地面に押し潰しコンビニの中に入ろうと扉に手を掛けた時…


ダンッ――…


「痛…ッ」

鈍い音とともにあたしの身体は扉に叩き付けられた。