涙の欠片


階段を下りて明かりの点いているリビングに一息吐き玄関に行ってヒールにつま先を通し、下駄箱の上に置いてある家の鍵を握り締めて外に出た。

鍵を掛けた後、携帯とは逆のポケットに鍵を押し込み、あたしは住宅街を抜け出した。


この街に来て一ヶ月が過ぎた。

父親の仕事の都合で引越ししてきた新しい街。

前の住んでた街は当たり前に嫌い。でも、この新しい街も、あたしは好きじゃない。



「…まただ」


大通りにあるコンビニの前のベンチに腰を下ろして、道路に目を向ける。

高級車か何なのかここからでは見えないけれど爆音を響かせながら走る車。

通り過ぎて行く車に目を向けながら、手にしていたタバコの箱の中から1本取り出し口に咥え、火を点けて煙を吸い込む。

前の街では耳にする事が無かった爆音。この街では流行ってるんだろうか…