涙の欠片


「何で言わなかった」


そう長い沈黙を破ったのはリュウの一言だった。

低いリュウの声が耳に入ってきても、あたしは頭を上げなければ口も開かなかった。

言わないんじゃなくて言いたくなかった。ただそれだけ…


時間が経つごとに「聞いてんのか?」と頭上からリュウの声が落ちる。

それでも反応をしないあたしにリュウのため息は降り注ぐ。


「この1週間の間に何で言わなかった。なぁ恵梨菜、答えろ」


ずっと俯くあたしは口を開ける事もなく、ギュっと膝を抱え込む。

そんなあたしにイラついたのかリュウは舌打ちをする。


「何度も言わせんな。答えろ」


カチっとライターの火を点ける音が微かに響き、あたしの口は密かに動き出す。