涙の欠片


微かに開いているリビングのドアから中に目を向ける。

新聞を片手にビールを飲む父。その前でヘビースモーカーの母は口から白い煙を吐き出す。

テーブルに置かれている灰皿は父と母のタバコの吸殻で溢れかえっている。


世間体が気になるのか、あたしの顔を見るたび〝学校行ってんのか″ 〝勉強してんのか″いちいち煩く言う父にあたしは昔から呆れていた。

母は母で夜の仕事であまり居ない為、代わりに父が口煩く言ってくる。それも学校のことだけ…


後は何一つ口にせず母に問い詰めるばかり。そんな母も答えるのが面倒なのか適当な答えを返すだけ。

学校の事にいちいち煩いのは多分、父が学校に行っていなかったからだ。

遊びくれてホストの道へ進んだ父は夜の仕事をする母と出会い、あたしを18で産んだ。

だから自分が欠けていた世間体の事は、あたしに厳しく当たってくる。

その所為であたしは自分が嫌い。馬鹿みたい。いい加減うんざりする。