涙の欠片


目を瞑って上から叩きつけてくるシャワーが落ち着かせタイルに弾く音だけを耳にいれる。

キュッと蛇口を閉める音が微かに浴室に響き、髪からポタポタと落ちてくる雫を両手で払う。

浴室を出てバスタオルで全身を押さえて水気をとり、下着と服を身につける。


真向かいにある鏡を見て奥底から息を吐き出す。

あたしは、この顔が嫌い。


髪を乾かした後、脱衣所を出ると奥にあるリビングから、また聞きたくない声が耳に入り込んでくる。


「恵梨菜(えりな)は居るのか?」

「居るわよ」

「遅くまでほっつき歩いてるんじゃないだろうな」

「そんな気になるんだったら自分で聞けばいいでしょ」


相変わらず繰り広げられる父と母の会話。いつだってあたしの話だ。