「ホント、面倒くせぇ女」


呆れたように言って一馬は立ち上がり、あたしの頭をポンッと軽く叩いた。


「だね…。本当に面倒くさいね」


苦笑いするあたしに一馬は優しい笑みで返し「頑張ったな」と、あたしの頭をクシャっと撫で手を下ろす。


「…うん」

「辛かったな」

「…うん」

「もう“嫌”って言うなよ」

「……ん、……」



本当に涙は正直で、溜まってた心の何かが一馬の一言一言で、あたしの目を通して涙は出る。

その頬に伝う涙をあたしは手の甲で拭い一馬を見上げた。


「最後のお願い」

「ん?」

「今日も宜しく」


そう言って、いつもの言葉を掛けると一馬は口角を上げたまま首を横に振った。


「幸せになれ」


一馬はあたしから目を逸らし校門に向けて指差す。

その方向に振り向いたあたしは思わず声を漏らしていた。



「………あっ、」