「ねぇ、お願い。お願いだよ。恵梨菜ちゃんしか居ない」
泣き崩れる麗さんを見て、あたしの身体はさっきよりも震えだしていた。
あ、あたしは…、リュウとは終わってんだ。
終わってるあたしにそんな事はできない。
「…でき…ない」
あたしが小刻みに首を振ると、「なんでよ…」って擦れる声と、「恵梨菜!!」と張り上げた一馬の声が耳に飛び込んできた。
それでも首を降り続けるあたしの背中を一馬は勢い良く押し、あたしの足は何歩か前に進む。
「行け」
顎で目の前にあるシャビた鉄階段を一馬は指す。
あたしの顔を見て眉を寄せる一馬と、地面に手を付いて泣いている麗さん…。
ドアの隙間から見える溢れかえった人集り。
あたしの身体に嫌な汗が走った。
額に手を当てて深く息を吐き出し、古びた階段にカツカツと音を響かせながら、あたしは2階へと向かった。



