涙の欠片


「恵梨菜ー、帰ろ」


放課後、達也はあたしの教室まで来て誘ってくれる。

それは付き合うまでもずっとそうだったから何も変わっていなかった。


「じゃあね」


あたしは美沙に声を掛け達也が居る所に駆け寄った。


「どっか行く?」


駐輪場に来た時、達也はサドルに跨りチラッと後ろを見る。


「んー…、どうしよっか」


あたしは自転車の後ろに座り達也の腰に手を添える。


「ゲーセンでも行く?」

「うん」


達也はゆっくり自転車を漕ぎはじめる。

暖かい風があたしの髪をなびかせる。

達也の背中はリュウとは全然違ってて1ヶ月送ってくれた一馬の背中とも全然違う温もりだった。

達也からは香水の香りがいつもする。

何の香水かは知らないけれど、あたしにとって落ち着く匂いだった。

本当に達也はあたしの周りにいた人達とは対照的に違う。

お母さんに言われた“イカツイ男、好きね”って言葉は全然当てはまらない。