「えっ…、あ、いや…神崎先輩の名前が恵梨菜の口から出るとは思わなかったから」
美沙は少し躊躇いながら口を開きあたしから目線を離さなかった。
「あー、そっか。リュウと居た時の事は、もう思い出だよ。あれから5ヶ月近くは経ってるし」
「そっか。でもホント先輩達が居なくなってから静かになったね」
そう言って美沙はゆっくり横を向き、廊下に視線を送る。
「そうだね…」
あたしも小さく呟き廊下に視線を送った。
この学校に来た時は、いつも煩くってリュウと翔平の名前で持ちきりだった。
中庭が好きだったリュウと翔平はいつもベンチに座ってて、その姿を女達は廊下の窓から覗き込んでいた。
それも今ではパッタリ止んで誰一人廊下の窓を覗き込もうとはしない。
「ねぇ…」
不意に聞こえてきた美沙の声にハッとし、あたしは視線を美沙に向ける。
「何?」
「一馬君とは話してんの?」
「えっ、一馬?」
美沙はコクンと頷く。
「ううん。話してないよ。ずっと送ってもらってて、あたしが断ってから一言も話してない。廊下で会っても話してくる事もないし…」
「そっか…」
本当に今では何もかもが思い出になってる。
もう、ホントに昔の話みたい…



