涙の欠片


あたしは携帯で時間を確認せずにそのまま鞄の中に突っ込んだ。

靴に履き替えて足を進めようとした時「ねぇ、」と声を掛けられ、あたしは後ろを振り向く。


「一人?」


そう言ってくる男にあたしはコクンと頷く。


「じゃあ途中まで一緒に帰ろうよ。俺も一人だし」

「うん」


何でか分かんないけどあたしはその時“うん”って返事をしてた。

分かんないけど一人で帰る自分が少し淋しかったのかも知んない。

だから誰でも良かったんだと思う…


「俺、達也。」

「あ、あたしは――…」

「恵梨菜ちゃん」


達也はあたしの言葉を遮りあたしの名前を言ってきた。

一緒に帰るって言っても話す事なんて何もない…。

ただボーっとして達也が話しているのをただ聞いていた。

そして何か分かんないけど気付けばカフェの中にいた。