涙の欠片


ずっと俯くあたしに「恵梨菜、ごめん」と美沙の小さな声が聞こえた。

そんな美沙に「平気」とうっすら微笑んで菓子パンの袋を開けて噛り付いた。


その後、美沙は話題を変えあたしに明るく振る舞った。

そんな美沙に答えるようにあたしも笑顔で返していた。

だけどやっぱり気分は優れなかった。



放課後、美沙と直人が帰った後、あたしは一人で下駄箱へと向かった。

時間を確かめようと鞄の中から携帯を取り出した時、手から滑って携帯が落下した。


……最悪。


ため息をつき落ちた携帯を拾おうとした時、誰かの手があたしの携帯へと伸び、あたしの前に差し出される。


「はい」

「ありがとう…」


そう言って携帯を受け取って見上げると「あっ…、」と思わず声が漏れた。


「また落ちたね」


そう言ってきたのは食堂でぶつかってきた男だった。


黒髪で優しそうな目。

それはどう見ても今まであたしの周りにいた男とは対照的に違う男だった。

ちょっと軽そうに見えるけど優しいオーラが伝わってくる。